Spector(2016)

根本的な価値観やモラルに存在する多義性とその副産物としての生活の中での世界観のコントラディクションやパラドックス、またそれを示唆するメタファーや例え話をテーマとして、それを可視化・体験化しようと試みました。フランツ・カフカのParables and Paradoxesの序文と、ウィリアム・エンプソンの詩から着想を得ました。
 ルームセットは、私のアパートの一室を模していますが、全てのオブジェクトと家具の色が反転しています。奇妙な青いルームセットには足を踏み入れることが出来ます。セットはライブ・カメラで常に録画され、セットを出た外側にあるスクリーンに送られます。スクリーンの中では映像はリアルタイムで色が反転されています。その中ではセットが現実的な色相を保ち、人物の色相のみが反転して見えます。
タイトルにあるSpectorとは、英語のSpecter(幽霊) とSpectrum(分光、スペクトル、色帯)の語源が同じであることに着目し、そのふたつを掛け合わせた造語です。